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賃貸住宅経営

目的と時代背景

1.賃貸住宅建設の目的

 従来より一番多い目的は相続税対策、その次に固定資産税・都市計画税対策でしょう。その他所有遊休地の有効利用や投資目的・資金運用等々…それに最近増えているのが老後の生活設計目的、またこれらの複合タイプもあり各人各様の目的です。何れにせよ目的をしっかり定めることが肝要で、それに合わせつくる必要があります。なお相続税対策で造られる方は相続時の負の財産(借金)さえつくればと安易に考えがちですが、それがきちんと採算が合い必ず返済できる借金であることが極めて大事なことです。安易に踏み切り家賃収入で借金が返せなくなり、自己資金を持ち出し挙句の果て土地・建物を手放した人もいます。また金融機関が融資する時は大丈夫で安全かと言うとそうでもなく、借り手に余信力・充分な資産背景があれば危険な賃貸住宅計画でも融資しますのでご用心下さい。現状は加熱投資ブームに付け込みハゲタカ投資ファンドや投機筋が賃貸住宅を投資・投機の餌食にして過剰供給させています。

2.賃貸住宅の時代背景(新時代突入)

 大昔は地主さんは少なく借家人が多かったのですが、次第に一般の人々も土地を所有し家を持つ時代になってきた今日では借家人の多かった大昔の様に楽に借家経営ができると言う訳には行きません。地主が増え借家人が減ったと言うことはそれだけ競争相手も増えたということです。また穿った見方をすれば地主さんが主体的に賃貸住宅を建設すると言うよりは、賃貸住宅建設業者・不動産業者等によって賃貸住宅建設自体が彼等のビジネスモデルとなってしまい、その為に地主さんが土地・資金を提供させられ利用されていると思える節もあります彼等が造り続ける為に、入居ニーズがない所や不健全賃貸住宅物件をサブリース・家賃保証のカード(切り札)を使い大量に世に誕生させ続けているのが現実なのです。しかし保証は地主さんにとって決して絶対安全・安心な仕組みと言う訳でもなく、憂き目に遭い悲惨なことになってしまった人々が昔から跡を絶たぬのが実情なのです。決して業者の餌食になってはなりません。

3.新時代で変わる賃貸住宅市場
 少子高齢化社会に入り人口減少が始まってしまっている今日、総務省統計局の発表によれば2018年には日本全国の空家が849万戸に達し、全戸数6241万戸の内13.6%の空家率になっています。別荘等の二次的住宅38万戸を除いても12.9%の空家率です。さらに賃貸住宅に限って集計すれば18.5%の空家率になっています。しかし相変わらず新築住宅(戸建住宅/注文&建売・分譲マンション・賃貸住宅)の供給増傾向に歯止めがかからず住宅着工が増えているので人口減少下で空家拡大はさらに強まるでしょう。
 相続税の強化・税制による囲い込みで賃貸住宅が乱造され続けています。アベノミクスによる建築工事費の高騰で耐火建築物(RC造・S造)が激減し非耐火建築物(木造・軽鉄造)が全国的に非常に多く建っています。一方投資型賃貸住宅(主に1K・1Rで耐火建築物)が需給バランスを無視し異常乱造されています。この結果賃貸住宅市場は今や大変な供給過剰時代を迎え人口減少下で空家拡大がさらに深刻化するのは必至でしょう賃貸住宅のさらなる淘汰・選別がますます拡がって行くのはのは確実です

 量産業者や投資業者の賃貸住宅は既に全国で大量蔓延となっています。これからの賃貸住宅は差別化された魅力ある非量産型賃貸住宅や非投資型賃貸住宅が求められます。大震災が予測されている今後は地震・火災に強い耐火建築物(RC造・S造)でオーナーの金儲けではなく健全な住み手満足を図った賃貸住宅が注目されるでしょう。建築費高騰のため耐火建築物が大幅着工減(投資型賃貸住宅だけは異常増加)となってしまい耐久性・遮音性に優れた健全な耐火建築物賃貸住宅が特に不足しているのです。
 しかし今の高い建築工事費では耐火建築物(RC造・S造)を建てられる人が限定されるところからなかなか質の高い耐火建築物(RC造・S造)の賃貸住宅が建っていません。供給が極端に少ない状態がこのまま続けば今後は既存の中古耐火建築物への入居者の注目が集まるのかも知れません。RC造・S造の新築賃貸住宅とリニューアル・リノベーションした中古再生賃貸住宅へのニーズが高まることが予想されます。今後は質の高い耐火建築物の市場供給はこの新築・再生の二つの路線が見込まれます。   
 4.投資型賃貸住宅・中古物件の購入について
    投資型賃貸住宅は不動産投資ファンド・不動産業者・ディべロッパー等がつくっています。
即ち新築時にこれらの利益が計上されていますのでこれがずっと事業の足かせとなり悪影響を及ぼし続けます。これらの業者から出されるものは高過ぎる家賃設定であったり、こけおどしのデザインで一見豪華に見えても質的には不健全で将来入居率に悪影響が出る可能性が高いのです。事業者が利益を上載せしてもなお買い手の採算が合うよう見せかけるため金儲け優先の窮屈で住みにくい賃貸住宅が主流となるのは必然です。投資用に販売されている物件は事業者がしっかり儲けた後のダシガラと思った方がよさそうです。このような物件に手を出すのはかなりハイリスクで危険と認識するのが賢明ではないでしょうか   
    また中古物件を購入されるときもご注意下さい。
うまく運用でき収益の上がる優良な賃貸住宅物件ならば、オーナーが手放すと言うのは余程のことがない限りあまりありません。オーナーが自らの物件を手放し売りに出していると言うのはそれなりの理由があるのでしょうが、その中には入居率が悪くどうにもならなかったり何か他に問題があったりする不良物件も多く含まれている可能性があります。そんな物件を不用意に買ってしまったら今度は自身が大変なことになり結局は物件を売りに出す破目に陥ってしまいます(今度は他人が悲劇を受け継ぐ…ただし売れればの話ですが)。 中にはラッキーな拾い物物件もあるかも知れませんが、一般的には中古物件購入はかなりリスクが高いと思った方がよいでしょう。 

5.誰でも何とかなる時代は終わり新時代の賃貸住宅経営
  
賃貸住宅事業は21世紀初頭頃まではそんなに深く考えずにあまり経験のない地主様が賃貸住宅経営に安易に載りだしても何とか経営が成り立つ時代でした。何も知らずにハウスメーカー・アパートメーカー・マンション建設会社に高いコストを払って造ろうが、入居者ニーズをあまり気にせず造ろうがどうにかこうにか入居者が決まっていました。また少々立地条件が悪くても物件に魅力がなくても入居者が入ってくれていたのです。そのおかげで銀行も担保さえあれば安易に融資もしてくれていました。

 これまでの少子高齢化にもかかわらず供給過多でも何とか空室パニックを免れてこられたのは核家族化による世帯数の増加もあったからです。しかしアベノミクス政策のもと大量に供給されてきたマネーに後押しされるかのように不動産投資に向かわさせられた国民が投資型賃貸住宅の一棟売り物件や一戸売り物件を買ったりしてさらなる賃貸住宅供給に拍車をかけています。人口減少が既に始まっているにもかかわらず、これまでの供給量をはるかに上回る物件乱造が全国各地で広がっているのです。

 人口集中の東京圏ですら2017年春先にアパートの空室率が約35%にも達しているのですから地方は押して知るべしです。2013年の統計でも約2割の賃貸住宅が空家となっています。なのにアベノミクスが始まってから怒涛のように投資型アパート・マンションが造られ供給が増え続けています。しかしこれも人口減少下の世帯数減少の逆流によりつじつま合わせが難しくなりました。立地条件を見誤ったり入居ニーズや家賃相場を無視したり、魅力ないものを造ったりすれば埋まらなくなってきたのです

 これからの賃貸住宅経営は今までのように事情がよく分からないまま安易にアパートメーカー・マンション建設業者の言いなりで任せ進めるのは危険です。自分自身でマーケットを調べどんな間取りニーズなのか?どれくらいの広さが求められているのか?いくらくらいの家賃が適正なのか?駐車場は何%くらい必要とされるのか?その結果どんな事業計画にしたらよいのか?これらの情報を正確につかまなくては行けません。その結果採算の合う建築工事費を割りだし発注しなくては失敗するのは必然です。

6. 建築費高騰・供給過剰・人口減少で賃貸住宅経営は曲がり角
 2023年家賃相場がそんなに上がっていないのに建築費高騰の影響で新築賃貸住宅の事業収支がかなり悪化しました。事業資金を自己資金でやる人は関係ありませんが借入金依存でやる人には事業収支の悪化で銀行融資が難しくなり融資不可となる事案が増えました。結果実現できる新築賃貸住宅の数が少なくなりめっきり新築賃貸住宅の供給が減りました。今後は中古賃貸住宅を購入したり既存賃貸住宅を活かしてリフォーム・リノベーションなどをして再生したりする賃貸住宅が増えることが予想されます。
 ひと昔前には土地・建物全額融資の話が通った時代もありましたが建築費が高騰し事業収支が悪化してしまってはもはやあり得ない話となりました。土地は所有地か自己資金で用意し建築事業費のみでの融資の可否を審査されます。加えて表面利回りが低くなったので建築事業費の何割かを自己資金で用意しなくては融資不可となるのが現実です…即ち資金力が必要なのです。但し例外として銀行の言ういわゆる属性の高い人(資産家)は事業収支が悪くて利回りが低くても融資が受けられることがあります。
 以前から賃貸住宅が供給過剰であることが統計上からも分かっています。人口減少は既に始まっているのですが新築賃貸住宅供給過剰でも何とか部屋が埋まっていたのは世帯数が増え続けていたことが助けになっていました。その助けも世帯数の減少が始まりとうとうなくなりました。賃貸住宅の空き家率が今後上昇して行き質の競争が厳しくなるのは避けて通れません。その中で生き残れる賃貸住宅はほんとうに住み易く良心的につくられてかつ相応な家賃のものだけに限られてくるものと思われます。
 ここ最近建っているものはとんでもなく高い家賃のものが多く常識的な家賃設定で建てているものが少ないのです。その高い家賃でも入れる人はともかく一般的には高い家賃が払える人はそんなに多くはありません。賃貸住宅は築年数・広さ・住み易さなど千差万別のものがいっぱいあります。高過ぎる新築よりも既存賃貸住宅の中から良質でまた家賃も相応な優良物件を探し出す方が余程賢い選択肢だと思います。新築と言っても最初だけなのでそんなにこだわる必要もなくそんなに違いもありません。

立地条件と間取り

1.立地条件について  
 立地条件は賃貸住宅事業にとって最も大きな影響力を及ぼします。立地条件とは需要・周辺賃貸住宅市況・住環境・利便性・地相等が代表的なものです。駅前立地・高い利便性・高い安全性等の住まいとしての人気のあるエリアは住み手も多く、ニーズに合った賃貸住宅を造りさえすればそんなに入居に対して不安はありません。しかし人気エリアだからと言って油断してはならず、人気エリアは逆に皆が競って造る傾向が強く競争にさらされます。また立地条件が良いにも拘らず失敗しているケースも現実には存在します。市場ニーズに合わぬもの・高すぎる家賃設定のもの・商品力や魅力に欠けるもの・地相に合わぬもの等を造り失敗してしまったオーナー様も多数存在しています。その反面ニーズがない所にもかかわらず、優良賃貸住宅を造り人気物件になっている物があることも事実です。また特定の需要に頼って造るときには特に細心の注意を要します。例えば大学・予備校・専門学校等の学生を当てにして造ったり、工業団地や大規模工場の勤労者を当てにして造ったりするときは極めてリスクが高いことを自覚してください。さらに加えて特定の企業・団体が借り上げてくれると言う話も同様なことが言えます。社会情勢や経済が激変してきている昨今、大学や大企業等が簡単に消滅・移転・契約解除等をしてくる厳しい時代だと言うことを忘れてはいけません。自らの傘を持たぬものにとって、寄らば大樹の蔭と言うのは落葉したら雨でずぶ濡れになってしまうことと裏腹なのを是非覚えておいてください。
2.間取り(プラン)について
 1K・1R・1DK・2DK・3DK・1LDK・2LDK・3LDK?……どんな間取りが良いのか随分悩まれるお客様がおられます。どんな間取りが適しているのか、それは入居者ニーズ・周辺賃貸住宅市況・町の特性・計画地の地相・将来に渡っての読み等を総合的に判断した上で決定されるべきです。また広さ(専有面積)も重要なファクターとなります。このうち限られた土地でより多くの収入をと言う単純な考えで全国的に皆でこぞって造ってきたのが20〜25平方メートル前後の1K・1Rです。さらに追い打ちをかけるようにアベノミクス下でのマネーの不動産への追い込みが謀られ投資型1K・1Rが異常供給されました。その結果、このタイプの賃貸住宅が大量にだぶつき不良ストックとなりどうにもならなくなっています。皆で赤信号を渡っても決して安全ではなかったということです。これは少子高齢化が随分前から言われていたにも拘らず、オーナー様の目先の欲深さ故に将来に渡る読みが欠如していたところを業者が巧みに利用し建ててきた結果に他なりません。それは業者にとって戸数がたくさん取れ工事費が大きくなる1K・1Rの方がうまみが多いからなのです。決してオーナー様の為に提案している訳ではありませんので、軽々に業者の口車に乗ってはなりません。くれぐれもご用心ください

収支計算書の見方

1.収支計算書(目論見書)について
 提案してくる業者によって様々な収支計算書のスタイルがあります。一般のお客様はこれを充分に判断し分析できるほど精通している方はそんなに多くはないと思われます。計画案についてはお客様なりに御自身で色々調べたり、不動産業者に聞き合わせたりして判断・分析ができる方も結構お見受けいたしますが、ベテランのオーナー様や経理の判る方は別として、収支計算書となるととたんに人任せ・業者の話鵜呑みと言う方が多いのではないかと察せられます。もしそうでなければこれほど多くのお客様が業者のうまい話(儲け話)にひっかかりひどい目には合わないのではないかと思います。
2.第三者にチェックを受ける
 業者と契約する前に一度その提案された事業計画と収支計算書をまったく業者と繋がりのない第三者の税理士・会計士・建築士・取引銀行の担当者・収支計算書に明るい人等に相談して見てもらってください。本当にその事業計画と収支計算書が妥当で正しいかどうか確認せずに自分自身の独断で契約しては危険です。またこれらの方々でも賃貸住宅事業にあまり詳しくない人では適切なアドバイスを受けられないかもしれません。相談をお願いする相手は賃貸住宅事業に詳しい人をしっかり選んでください。
3.自分でできるチェック方法
 収支計算書は設定条件を操作すれば業者側に都合の良い結果を作り出すことは簡単にできます。そのやり方は色々あります…あり得ない長期固定の低金利、高すぎる家賃、家賃の段階的値上げ、建築工事費のカモフラージュ(別途工事として杭打ち工事費・外構工事費等を除外)、公租公課(建物不動産取得税・登録免許税・固定資産税・都市計画税等)外し、火災保険料・維持管理費・建物修繕費・水道加入分担金等非計上等々…本来かかる費用を消して総工費を安くみせたり、高すぎる家賃で収入を水増ししたりあの手この手の総動員、余程注意を払わないとうっかり載せられてしまいます。でもオーナー様にもできる簡単な安全性のチェック方法をお教え致します。最初かかる総工費(建築工事費・設計管理費・消費税等…最大漏らさず計上)をとし、年間総収入(家賃・共益費・駐車場代…計算便宜上満室で計上)をとし、/Bの数字を割り出す。いかなる操作をして良い結果を捏造した収支計算書でもこれで化けの皮が剥がされます。相続税対策なら11くらいまでなら許容範囲、10くらいならまあまあの収支、9を割るようであれば良い収支、8を割るようであればかなり良い収支となります。なおこれは建築事業費全額借入れのケースで、自己資金を投入して行けばさらに安全側へシフトして行きます。即ち自己資金を入れ圧縮した借入金をとし/Bの数字のチェックをすれば良いのです。全額借入れできてもある程度余裕を持って借り入れされることをお勧めいたします。
4.建設工事費上昇時への対応
 現在東北震災復興工事・熊本震災復興工事の必要のある最中にも係わらず、2013年夏頃より政府脱デフレ政策の影響で建設工事費が異常に高騰してしまいました。その大きな要因は消費税率アップによる駈込み需要膨張特定の輸出型製造業の利益のための円安景気対策に伴う無理な公共工事増大・東京オリンピック&リニア新幹線関連工事の三つです。折りしも建設業界は長年の不況で建設労働者が近年大きく減少してきましたから、この需要の増大にはすんなりついて行くことができません。必然今までの値段では工事ができず値段が上がってしまったという訳です。かと言って家賃を建設工事費上昇分大幅に吊り上げることもできません。けれども2015年1月相続税強化(施行済み)に続き2019年10月消費税10%導入(当初2015年10月施行予定)予定を目前に控え何もしないで指をくわえて見ていると言う訳にも行きません。今この建築費高騰の中で採算が合うように賃貸住宅を建てるには、総事業費の中へ自己資金を入れて残りを借入資金でまかないその金額(借入資金)で前述3.で検討するような収支計算書の指数のチェックを行ったうえ、ご説明した数字になるよう借入金額を調整すればよいのです。即ち総事業費のうちの借入資金(−自己資金)を分子としてD/Bをチェックすることになります。

建築工事費と家賃について

1.建築工事費の決定要素
 建築工事費はどのようにして決まるのでしょうか。以下にその決定要素の主なものを列記して見ましたので、計画時の建築工事費ご検討の際に是非お役立て下さい。
〇建物の構造…木造・軽量鉄骨造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造
 建物の構造によって建築工事費の単価は異なります。一般的には《木造・軽鉄造<鉄骨造・鉄筋コンクリート造<鉄骨鉄筋コンクリート造》となります。
〇建物の規模
…小規模・中規模・大規模
 建てようとしている建物の規模によって建築工事費の単価は異なります。一般的には小規模なものは割高、大規模なものは割安となります。
〇建物の形状
  
建物の形状自体の経済的設計が建築コストに大きな開きを出します。同じ容積・戸数を確保するにも知恵と工夫が必要です。屋内駐車場は単位単価は下がる要因となりますが、収益性は悪化します。
〇建物の設備…エレベーター・水道ポンプ・各種消防設備等
  中高層の建物はエレベーターが付きますし、また水圧が足りぬ為水道加圧ポンプや受水曹(場合によっては直結ブースター)が必要です。規模が大きくなると建築基準法上の避難施設や耐火上・防火上の制限がでてきます。またさらに消防法で自動火災報知設備・連結送水管・屋外消火栓・スプリンクラー等の消防設備も必要となってきます。これらは全てコストアップに繋がります。

〇建設地の地形…敷地の大きさや形・起伏・傾斜・段差・崖
  建てようとしている敷地の地形の建て易さの違いによって建築コストは異なります。高低差が大きいと擁壁・土工事等で思わぬコストの増大となることがあります。

〇建設地の支持地盤…軟弱地盤・普通地盤・強固地盤
  建てようとしている場所の地盤の固さによって建築工事費は異なります。地盤が悪いと地盤改良工事・杭打ち工事等が必要となります。これもコストアップの要因となります。

〇下水道管の有無
 下水道管がきているかどうかによって建築工事費は違ってきます。下水道管がなければ合併浄化槽が必要となりその分だけ建築コストは上がります。
〇開発許可の要否
 都市計画法による開発行為に当たるかどうかで、開発許可の要否が決まります。必要であればその分建築コスト上昇の要因となります。
〇指導要綱・条例等の要否

 所轄行政庁には建築に際して指導要綱・条例等が定められている場合があります。該当する場合は建築コストに影響してくることがあります。
〇宅造法・崖条例等適用の有無
 宅地造成等規正法・崖条例等の適用を受けるかどうかによって建築コストに影響が出てきます。
〇仕様(グレード)…住宅設備・仕上げ・収納
 造る建物の仕様によって大きく建築工事費が違ってきます。住宅設備・仕上げがどの程度のものなのか、また収納がどの程度充実しているのかです。
※以上の様に建築工事費は立地条件・構造・規模・法的制限・グレード等様々な要因によって決まってきますので、簡単に高いのか安いのかを他と比較して論ずる事はなかなか容易ではありません。     

2.建築工事費のからくり
 自動車のような工業化製品のようなものであればどこで買っても同じものが手に入るので安ければ安いほどお値打ちに買えたことになります。しかし建築工事費が高いか安いかを判断するときはかなり慎重な検討を要します。建築工事は現場にて一品受注生産を行うので造るものは各社各様千差万別のものが出来上がります。全く同じものであれば単純に金額だけで比較できますが現実はそうではなく単純に金額だけで比較するのはかなり危険な話です。例えば今標準的な仕様の25平米型1Kが500万円位/戸当りで造れるとします。これを400万円位/戸当りで造れますと言えば2割安いことになります。しかし同じものがそんなに安く造れる筈もなくそんな場合には結果的に仕様(グレード)を下げて造られることになります。このグレードの低下の意味がオーナーさんにはなかなか理解されず、まんまと業者の術中に嵌まってしまうケースが後を絶ちません。グレード低下は競争力を弱くすることになり、実はこれが賃貸経営上致命傷となってしまっている場合が結構多いのです。すなわちオーナー様は騙せても、そこに入居して毎日住む人達は騙せませんので、これが入居率や家賃に大きく響くことになってしまうのです。新築時安く造れて儲かった気がしても完成後に入居率・家賃の低下と言う厳しい現実が待ち受けています。
3.家賃設定操作の話
 大きな会社ですとテレビ・ラジオ・新聞等のマスメディアを使ったりして宣伝広告をしています。また会社が大きい分だけ固定費も巨額となります。株主に配当金も出さなくてはいけません。これらのお金は一体どこから捻出されるのでしょうか?…そうです!お客様が支払った建築工事費の中から捻り出すのです。普通に考えれば同等のグレードのものを造ろうとすれば当然大きな会社に頼んだ方が割高になるのは誰でも分かる自然な話です。当社で実際にあった話ですが大手の某会社が3億円と言っていたものを2億円で造ったことがあります。それで当社の造ったものが劣っているかと言うと世間の評価は全く逆のようです。高い建築工事費で受注するには家賃設定を相場より高くすることで帳尻合わせをします。では大手の某会社が造った賃貸住宅ならば入居者は工事費が高くなった分だけ相場より高い家賃を支払って入るでしょうか?そんなお目出たい話は聞いたことがありません。結果そのような方法はいつまでも通用する筈もなく、何れ(いえ最初から?)家賃は相場へと下落して行きます。また大手の会社と当社がバッティングした場合対抗して仕事を取るために建築工事費を下げてくることがありますが、その時は前述のようなグレード低下によるコストダウンを本気で考えていますから本当に怖い話です。

工事の発注方法

 直接工事を行っているのは個々の職種の職人さんであり、また分業化された其々専門の建築工事屋さんや設備工事屋さんの人々です。実際には建築工事現場はこれらの現業の中小零細事業者の人々の労働と技術によって支えられています。さらに設計図に従ってこれらの人々を束ねて工程を組んだり段取りを考えたりして工事を進めて行くのが現場監督さんの役割です。そして地域の建設会社・工務店がこの現場監督さんを雇用しています。基本的にはこれだけの役者が揃えば建物は造れると言う訳です。あとは工事をする為に建築設計事務所に別途設計監理の仕事を依頼して設計をしてもらいその図面通り監理をしてもらいます。つまり建築工事に余分なお金をかけずに適正価格で造るには、これだけの関係者以外(商社・建築ブローカー・口利き屋等)の関与を一切排除することが最も効果的で良い方法なのです。
 さて1980年代のバブル経済の頃の話ですが、日本社会は流通の暗黒大陸(流通の過程で直接仕事もせず価値も生まず何もしないでマージンだけを吸い上げる存在が大きく多い状態)であるとまで言われていました。言い方を変えれば産地直送と正反対の社会だと言える訳です。今日、一般消費財についてはグローバルネット社会・デフレ不況のせいか産地直送に近い状況になり価格が下がってきたものが増えているようですが、いまだに建築工事はお客様と直接工事に携わる関係者との間で本来必要とされていない存在に対して余分な(払う必要がない)お金が結構吸い上げられています。それを防ぐ方法は工事を直接地域の建設会社・工務店に発注すれば良いと言うことになりますが、そのまま頼むと設計施工で発注する特命発注となり工事価格が意外と割高になってしまう可能性もありますので注意が必要です。
 そこで設計監理と施工を切り離し、第三者の専門家である建築設計事務所に設計監理を分離発注をすることによって、施工については複数の建設会社の間で競争入札を行い適正価格にする方法がとられます。また価格を適正にするだけではなくお客様に代わって専門家である建築士が現場監理をしてくれると言う安心感もあります(姉歯事件以降国土交通省も設計監理と施工を切り離すべきと考え建築基準法・建築士法を大幅に改正強化してきています)。この監理というのは現場監督の行う"現場管理”ではなく建築士法に定める工事を図面通り行う為の“監理”と言う仕事にあたりますので両者の区別が必要です。
 また昔からよく耳にしますが未だに"大きい会社でないとアフターフォローが心配だ”と言われる方が結構おられます。しかし1991年以降のバブル崩壊の過程でどれほど多くの大企業が破綻したことか振り返って見ればそんな話にはあまり真実味がないということに気が付きます。それにこの国は昔から何故か大きな会社ほど弱者切捨ての債権放棄やエンドユーザー泣き寝入りの会社更生法&民事再生法がまかり通り易い社会となっています。むしろ将来のアフターフォローのことを考えるならば、直接仕事をしてくれてかつ信頼のおける人・会社に間を介さず頼んだほうがよっぽど安全・安心なのではないでしょうか。

管理の重要性

 どんなに良い建物を造り安全な事業計画でスタートしても、建物の維持管理を怠ってはせっかくの賃貸住宅事業も台無しとなってしまいます。造った建物の維持管理を徹底しなければ住人は次第に出て行きます。そうならない為には信頼できる管理会社を見つけて管理を委託してください。正式に委託契約を結ぶ前にはきちんと見積りを取って管理の内容・値段を他社と比較の上しっかり確認・精査してください。いい加減な管理・高すぎる管理は長期に渡って賃貸住宅事業に悪影響を及ぼし続けます。またいい加減な管理会社への管理委託は建物の劣化も見逃すことにもなってしまいます。さらに建物の日常管理のみならず、入居に際しても管理会社がきちんとした審査を行い、不良入居者を極力入れないように厳選することも入居率安定維持の為には必要不可欠だと言えます。

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