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ブログ−2010年

商業地域における日照問題

2010-05-21

 街で以前見かけた光景ですが、12階建ての分譲マンションの壁面に大きく「マンション建設断固反対、日照権を守れ!」と言う垂れ幕がかかっていました。よく見てみると幅員4メートルの道路を挟んだ南側(大通りの交差点の北東角地)に工事中の同じく12階建てのマンションの建設現場がありました。その辺りは大通りに面した商業地域ですから日影規制もなく法的にも何ら問題のある状況ではありませんでした。他の場所でもこれに似たような事例“日影規制のない商業地域のような所で既設建物や既設マンション等が日照権による隣接マンション等の建設反対運動をしているケース”を今までにいくつも見たことがあります。
 都市計画法第9条9項で商業地域は「主として商業その他の業務の利便を増進するため定められる地域」と決められています。この為建築基準法第56条の2ではあえて商業地域が日影規制から除外されている訳です。その代わり建蔽率・容積率・高さ制限に大幅な緩和がされ都市の高度利用を促進するよう図られています。さらに都市防災の観点からも大通りに面した地域は路線防火地域に指定され、高層の耐火建築物の建設を促進し大通りを挟んだ火災延焼をブロック単位で防ごうと考えています。法体系や理念から見ても一般住宅地のような陽当たりの満足感を求めるような地域ではないことは瞭然としています。反対している人々自らもこの緩和された建蔽率・容積率・高さ制限の恩恵により高層のマンションに居住しているではないのでしょうか。
 このように定められている地域内で日照権を振りかざすと言うのは一体どう言うことなのでしょうか。もともと都市計画法では、高密度に利用できる商業地域から住環境を優先させる低層住居専用地域まで区分けされた種々の用途地域を定め、都市構成全体のバランスを図っています。都市計画法に定める商業地域と言うのは自然な住環境を求める場所ではなく、買い物や仕事をしたりする為に都市機能をむしろ高密度に利用する場所ですから、そこへ住まうと言うのはそもそもが本来的目的や意図ではありません。この地域に住まうと言うのは都市計画法上はあくまで副次的利用だと言えます。
 そもそも都市に住まうというのはその利便性を求めて人々が集まるわけですから、自然な住環境と言うのはその代償として或る程度満たされなくても致し方ないと思われます。都市で充分な日照を求めるならば日影規制等が厳しい低層住居専用地域に住まなくてはなりません。さらに本当に豊かで自然な住環境を求めるならば都市ではなく広々とした郊外地に住めばよいのではないでしょうか。余談ですがこの反対運動をしていた12階建てのマンションの真北・真下の全く陽の当たらない隣接地に、明らかに以前より建っていたと思われる古い木造2階建ての住宅がひっそりと佇んでいるのが、建設反対運動の垂れ幕と対比して何とも矛盾と人間の身勝手さの感じられる光景でした。

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